「介護職を始めたいけど、介護施設の種類がいっぱいあって良く分からない」
「どの老人ホームが自分に合っているのか知りたい」
こんな疑問を持っている方がいるのではないでしょうか。
せっかく介護職を始めようと思っても、思っていた働き方と違う介護施設に就職してしまったら困ってしまいます。
ライフスタイルや目標とすることによって、老人ホーム・介護施設の選び方は異なってきます。
老人ホームや介護施設と言っても、色々な種類、働き方があるからです。
就職先、転職先を決める前に特徴やサービス内容について詳しく知っておく必要があります。
ここでは、これから介護職を始める方、転職を考えている方に介護施設の一覧と、それぞれどのような利用者、働き方なのかを分かりやすく紹介していきます。
介護施設は大きく分けて公的施設と民間施設の2種類

介護施設は、大きく分類すると国や地方自治体などの公的機関が運営する「公的施設」と民間企業が運営をする「民間施設」に分かれます。
それぞれ介護に対する考え方、方針が大きく変わってきます。
まず、この違いを知っておきましょう。
公的施設
公的施設は国や地方自治体などが運営していて、介護保険施設とも呼ばれています。
介護度の高い方や低所得者を支援することや地域密着に重点を置いています。
費用も民間施設に比べると安く人気ですが、入居までに1年以上と長い期間待つことが多くなっています。
介護に重点を置いているため、レクリエーションなど利用者に楽しんでもらうという観点は低い施設が多いです。
介護職として勤める場合、とにかく介護スキルを上げたいという人向きです。
民間施設
民間施設は、一般の企業が運営している施設で、高齢者にどれだけ楽しんでもらうか、安楽にすごしてもらうかを重点に置いています。
民間企業が運営することにより介護はサービス業として進化したといっても過言ではありません。
その分、費用が高めになっています。
各施設ごとに医療特化、リハビリ特化など特色をだしていて、レクリエーションも充実しています。
介護職として勤める場合、介護スキルの向上もありますが、なにより利用者の笑顔を見るのが喜びに感じるという人向きです。
介護施設・老人ホーム種類別特徴
介護サービスの種類は大きく分けて「通いでのサービス」と「訪問でのサービス」そして「施設に住んでいる人へのサービス」に分けられます。
それぞれ、大きく働き方は変わってきますが、「施設で働いてみたいな」という方には更に沢山の種類に分かれています。
ここでは、「施設」のそれぞれに特徴、働き方の違いを詳しく紹介します。
種類 | 運営 | 入居時初期費用 | 月額 | 入居条件(△は施設による) |
---|---|---|---|---|
特別養護老人ホーム | 公的施設 | 0 | 5〜15万円 | 要介護3~ |
介護老人保健施設 | 公的施設 | 0 | 10万〜20万円 | 要介護~ |
介護医療院(介護療養型施設) | 公的施設 | 0 | 10万〜20万円 | 要介護~ |
軽費老人ホーム | 公的施設 | 0~数十万円 | 10万〜30万円 | 自立~ |
ケアハウス | 公的施設 | 数十万〜数百万円 | 10万〜30万円 | 自立~ |
介護付き有料老人ホーム | 民間施設 | 0~数千万円 | 15万〜50万円 | △自立△要支援〇要介護~ |
住宅型有料老人ホーム | 民間施設 | 0~数千万円 | 15~50万円 | △自立〇要支援~ |
グループホーム | 民間施設 | 0~数千万円 | 10~30万円 | △要支援〇要介護~ |
健康型有料老人ホーム | 民間施設 | 0~数億円 | 10~50万円 | 〇自立△要支援 |
サービス付き高齢者向け住宅 | 民間施設 | 0~数十万円 | 10~30万円 | △自立△要支援〇要介護~ |
シニア向け分譲マンション | 民間施設 | 数千万〜数億円 | 10~30万円 | 〇自立△要支援△要介護 |
一覧にしてもわかる通り、民間施設は高額な費用が掛かるのが分かります。
特に民間施設では、サービス業として高いレベルの礼儀作法、接遇が求めれるということが分かると思います。
もちろん、しっかりと研修も用意されているので安心してください。
いずれにせよ、利用者に尊敬の念を持って接することは公的施設でも同じです。
肝心なのは、介護職としてどんな働きをしたいのか、どんな分野に興味があるのかです。
一つずつ、説明していきます。
▼特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームは要介護3以上の人を対象とした施設です。
介護保険によって低価格でサービスを受けることができます。
従来型の個室(旧型)に対し、ユニット型(新型)と呼ばれるタイプが増え、以前に増して手厚い介護を受けられるようになっています。
低価格で終の棲家としての人気もあるので、入居の順番待ちになることが多くなっています。
看護師は夜間にいなくてはいけないという決まりはないので、施設によっては日常的に医療的ケアが必要な人は入居できない可能性があります。
「特養」と呼ばれることが多いですね。
こんな人におすすめ
仕事内容としては、生活の中の全般となります。
要介護3以上の利用者の介護をこなすことで、介護の技術的には一通り習得することができます。
24時間の対応が必要なので、夜勤がありますが、パートでの勤務も可能です。
本格的に介護技術を学び、介護の仕事を頑張っていこうと思っている人にはおすすめです。
▼介護老人保健施設
通称「老健」とも呼ばれます。
何かの病気やケガで入院し、筋力などが落ちてしまった高齢者が退院後すぐに家での生活に復帰できない時に、数ヵ月程度滞在することを目的とした施設です。
滞在中にはリハビリを重視して、在宅復帰を目指します。
在宅復帰を目指した施設なので、リハビリの専門職である理学療法士や作業療法士などが常勤しています。
また、ほかの介護施設に比べて入所期間は短く、3〜6か月ということが一般的です。
こんな人におすすめ
身体介護中心のお手伝いになり介護技術が向上する施設です。
24時間の対応が必要になりますので、夜勤がありますが、パートでの勤務も可能です。
リハビリのプロが揃っているので、リハビリに関する知識や技術に興味がある人にはおすすめです。
理学療法士や作業療法士と一緒に働いていて、魅力を感じ、学校に通い始めたという人もいます。
▼介護医療院(介護療養型施設)
介護医療院とは、2023年度に廃止することが決定した「介護療養型医療施設」の主な転換先として登場した施設種別です。
医師の配置が義務付けられていて、たん吸引などの医療設備も充実していることから、医療ニーズが高い方から看取りやターミナルケアの対応も可能です。
ただし、完全個室ではなく、パーティションなどで分割されている場合もあります。病院の大部屋のようなイメージですね。
こんな人におすすめ
医療的ケア重視の施設ということで、他の施設に比べ、お元気な人は少ないということもあり、身体介護中心となるでしょう。
看取りも多く、精神的に辛く感じるかたには向かないかもしれません。
逆にこの仕事、ご利用者に敬意を持って、最期の時をなるべく安楽に過ごしていただきたいという想いの人には向いています。
医師や看護師と二人三脚となってサービスに当たるので医療的な知識も豊富に得ることもできます。
▼軽費老人ホーム
特養とは違い自立した人を対象とした施設で、他の老人ホームと比べて安い費用で入居できる点が特徴です。
自立生活に不安がある60歳以上の高齢者が、家庭環境などの理由で家での生活は難しい場合に利用されます。
入居した後に要介護状態になった場合は在宅サービスを利用する必要があります。
こんな人におすすめ
食事や洗濯・掃除などの日常生活のサポートが中心となります。
現段階では軽費老人ホームとケアハウスを分けて表記しましたが、ケアハウスはこちらのサービスの一部となります。
将来的にはケアハウスのみのサービス提供となる予定です。
家事などの生活支援中心で、都市型の軽費老人ホームは20名までと小規模になります。
体力的にも負担が少なく、アットホームな施設で働きたい人にはいいでしょう。
▼ケアハウス
軽費老人ホームはA型・B型・C型の3種類あります。
C型がケアハウスにあたり、ケアハウスは自立型と介護型に分けられます。
軽費老人ホームの種類別の特徴
軽費老人ホーム(順次ケアハウスへ) | ケアハウス(c型) | ||||
A型 | B型 | 都市型 | 一般型 | 介護型 | |
食事提供 | 〇 | ✖ | 〇 | 〇 | 〇 |
介護サービス | ✖ | ✖ | ✖ | ✖ | 〇 |
- 一般型ケアハウス
基本的に掃除、洗濯や、食事の提供の生活支援サービス中心で緊急時の対応などが含まれます。介護が必要になると外部のサービスを利用することになります。 - 介護型ケアハウス
スタッフによる介護サービスが提供されます。要介護以上の人が入居でき、看取りまで行ってくれる施設もあります。
一般型と同様のサービスに加え、食事や入浴、トイレなどの身体介助、機能訓練や通院の付き添いなどのサービスがあります。
こんな人におすすめ
型により、仕事内容が大きく変わってきます。
ケアハウスというと小さい規模をイメージしがちですが、意外と大きな施設が多いです。
身体的に負担が少ない施設が良ければ一般型。
とにかく経験を積み、介護の技術を磨くのなら介護型が向いています。
▼介護付き有料老人ホーム
介護施設と言えばこれを思いつく人は多いのではないでしょうか。
要介護の人を対象としている「介護専用型」と自立・要支援も受け入れることのできる「混合型」がありますが大きくは変わりません。
身体介護はもちろん、生活支援、レクリエーションなど幅広い範囲で生活全般のお手伝いとなります。
看護職員は日中のみで夜間は不在の施設もあり、機能訓練指導員の時間数なども異なります。
一般企業の運営なので、何を売りにするのかによって変わってきます。
こんな人におすすめ
生活全般のお手伝いなので、レクリエーションなども重要視されます。
施設での生活を一緒に楽しみたい、楽しんでいいただきたいという人には向いています。
医療やリハビリなど施設によって強化している部分が異なってきますので、どういった施設かを良く研究してから挑んでください。
介護サービスを多種類運営している企業も多いので、将来的に同じ会社で異動し他の施設を見てみたいという人にもいいかもしれません。介護技術、接遇ともに習得可能です。
▼住宅型有料老人ホーム
自宅に住んでいる感覚で利用できる施設で、自立から要介護まで幅広い方が入居できます。
介護付き有料老人ホームと違い、介護が必要な場合は外部サービスを契約する必要があります。
ただし、「特定施設入居者生活介護」の総量規制で、有料老人ホームを建てられないため、住宅型にしている施設が多く、介護サービス費を別にもらって社内でサービス提供する「介護付き有料老人ホーム」と変わらない施設が多くなっています。
有料老人ホームを建てられないため、住宅型にしている施設が多いため、仕事内容をしっかりと確認してください。
介護付き有料老人ホームと変わらず、身体介護から生活支援サービスまでの生活全般と考えておいたほうがいいかもしれません。
ただ、比較的、自立度は高いので、身体的な負担は少なくなっています。
介護技術、接遇ともに習得可能です。
▼グループホーム
認知症を患っている65歳以上、要支援2以上の高齢者が、5~6人の少人数で専門的なケアを受けながら、共同生活できる介護施設です。
自治体に住民票がある人でないと利用できないこともあり、家庭的な雰囲気で地域密着型といえるでしょう。
家事や身の回りの自分達でできることは、出来るだけ自分達でしながら必要なところはサポートを受けられます。これには認知症の進行を緩やかにする狙いもあります。
介護度が進むと退去をしなければいけなくなることもあります。
少人数で家庭的な雰囲気で働くことができます。
身体介護は少ないので、身体的負担は少ないですが、認知症への理解がないと虐待などに繋がる可能性もあるのでしっかりと勉強が必要です。
認知症のスペシャリストを目指すにはいい施設です。
▼健康型有料老人ホーム
基本的に介護の必要が無い自立した生活が送れる人の施設になります。
快適な生活を送るための設備が充実していて、健康増進に励みながら生活をしていきます。
施設からは食事やレクリエーション、サークル活動の提案、運営の提供があり、他の人との交流などを楽しみながら暮らしてもらうことを目的とした仕事内容が中心です。
自立した人が対象となるため、要介護状態になった場合は退去しなければいけなくなることもあります。
レクリエーションや安否確認といったサービスをしていきます。
レクリエーションの中で、利用者さん同士が交流を含め健康維持できるようサポートする仕事です。基本的には高級な施設となるので、ホテルマンのように接遇に自信があるという人に向いています。
施設自体少なく募集もほぼ見かけることはありません。
▼サービス付き高齢者向け住宅
要介護度の低い高齢者を対象としたバリアフリー構造の住宅で、自宅とほぼ変わらない生活が送れます。
有資格者の相談員が常駐し、安否確認と生活相談サービスを提供します。
「一般型」と「特定施設型」があります。
「特定施設」の場合、介護付き有料老人ホームと同等のサービスを実施し、介護度が重い方でも住み続けられます。
「一般型」のほとんども訪問介護施設を併設し、別サービスになりますが同様に介護を提供できる環境です。また、リハビリなどの決まりがないのでこちらも別途、契約が必要になります。
サービス付き高齢者向け住宅自体の仕事は安否確認と相談対応を主として、生活サポート的な仕事になります。
ただ、基本的には施設に併設された訪問介護やデイサービスでの採用になります。
仕事内容をしっかりと確認して挑みましょう。
要介護度の低い健康な高齢者が多いので、身体的な負担が少ない反面、介護技術が習得しづらい環境です。
▼シニア向け分譲マンション
主に自立や要支援の高齢者を対象にしたバリアフリーが整っている分譲マンションです。
分譲形式なので、売却・譲渡・賃貸・相続など自由にできます。
「施設」という概念ではなく、マンションといった感じです。
家事援助サービスを受けられたり、温泉やプールが付いている施設もあります。
所有物件なので介護サービスが必要になっても退去を迫られることはありません。
外部のサービス事業所を自由に利用可能です。
しかし介護度が重くなったり医療的ケアが必要になれば、有料老人ホーム等へ転居する可能性があります。
家事などの生活支援が中心になります。
介護技術などの習得は難しくなります。
礼儀作法などを身に着けたい人には最適ですが、ほぼ募集を見かけることはありません。
納得いく勤め先を探そう
利用者の心身の状態、経済状態に合わせて、より良いサービスを提供するために、老人ホームや介護施設は、色々な種類や特徴があります。
各施設で働き方も違ってくるので、自分のライフスタイルや介護のイメージに合った施設を選ぶことが重要です。
ここにあがっているものは施設であって、居宅支援の介護サービスもあることで、選択肢が多く悩んでしまうかもしれませんが、その分、働き始めた時の戸惑いも少なく、仕事に充実感を得ることができるでしょう。
しっかりと介護業界や事業所について研究して挑んでください。
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